2021自民党総裁選出馬への想い
この度、自由民主党総裁選挙に立候補することを決意しました。
昨年来のコロナとの戦いに、菅総理の強いリーダーシップのもと、全身全霊を傾けて取り組んできました。菅総理には、日夜コロナ対策にご尽力頂き、心より敬意を表します。しかし、結果として今、国民の間には、
- 政治が、自分たちの声、現場の声に応えてくれない。
- 政治に、自分たちの悩み、苦しみが届いていない。
- 政治は、信頼できない、期待しても仕方ない。
こうした切実な声があふれています。
国民政党であったはずの自民党に声が届いていないと国民が感じている。
「信無くば立たず」。
政治の根幹である国民の信頼が大きく崩れ、我が国の民主主義が危機に瀕しています。私は、自民党が国民の声を聞き幅広い選択肢を持つ政党であることを示し、もってこの国の民主主義を守るために、自民党総裁選に立候補します。
コロナ禍で総裁選挙などやるべきでないとの声が一部にあることは承知しています。しかし、政治に声が届かないとの切実な国民の声が現実にある以上、その切実な声に耳を傾け、政治に届ける場として総裁選は堂々と行われるべきであると信じています。
自民党総裁選挙 出馬への想い
昨年9月の総裁選挙で敗北し、「岸田は終わった」、そんな厳しい評価もいただきました。率直に言って私自身の力不足でした。政治家として私に出来ることがあるのか。初心に立ち返り、この一年間、多くの国民の皆さんの声をうかがってきました。
「医療・福祉現場は限界だ」、「コロナ禍で生活が苦しい」、「バイトのシフトが減った」、「家族に会えなくて寂しい」、「事業継続はもう無理だ」。様々な声をうかがってきました。
私はその声をこの小さなノートに書き溜めてきました。自民党が野党に転落してから、10年以上続けてきた習慣です。皆さんから伺った大切な言葉を、ノートに書き込み、読み返す。この一年だけでも、ノート3冊分、10年間で30冊近い、大切な言葉を頂いてきました。私にとって、このノートこそ、最大の宝物です。
改めてこのノートを読み返し、私にはやるべきことがある、確信しました。この国の重大な岐路にあって、国民の声に耳を澄まし、政治生命をかけて、新たな政治の選択肢を示します。
自民党総裁選挙は、新たな政治の選択肢を示す場として、相応しいものです。コロナ対応に休み無く日夜懸命に奮闘されている菅総理に全面的に協力しつつ、その菅総理を含めて、総裁選を堂々と戦うことで、国民の信頼を取り戻し、この国の民主主義を守り抜いていきます。
自民党の改革
先ず隗より始めよ。民主主義を守り抜いていくためには、自らが変わらなければなりません。そうでなければ、自民党に国民の厳しい目が向けられる今、信頼を回復することは出来ません。
自民党のガバナンス改革を断行します。
自民党が多様性と包容力のある国民政党であり続けられるよう、党役員に中堅若手を大胆に登用し、自民党を若返らせます。自民党が常に新陳代謝を続ける組織であるよう、「比例73歳定年制」を堅持します。
「政治と金」の問題については、国民の皆さまに丁寧に説明し、透明性を確保します。
こうした刷新を進めるため、党役員の任期について明確化します。総裁を除く、役員任期を、「1期1年・連続3期」までとすることで、権力の集中と惰性を防ぎます。
新型コロナ対策の基本方針
新型コロナとの闘いに、私は、納得感のある丁寧な説明と、強い危機感に基づく対策で臨みます。
コロナとの闘いには、国民の皆さまの協力が不可欠です。そのためには、政府方針への国民の皆さまの納得感が不可欠です。私は、方針の内容・その必要性・決定に至るプロセスについて、自ら丁寧に説明します。また、国民の皆さまの納得感を頂くためにも、営業制限をお願いする事業者の皆さま、政府方針により不利益を受ける皆さまには、責任を持って、できる限り公平な経済対策を実施します。
また、危機管理の要諦は、最悪の事態の想定です。「多分よくなるだろう」では、コロナに打ち克つことはできません。常に最悪の事態・展開に備えながら、徹底した人流抑制、病床・医療人材の確保、経済対策、ワクチン接種促進、治療薬の開発・普及などの課題に取り組みます。また、ウィズコロナの期間が長期化する可能性を見据えて、新たな専門家会議を立ち上げ、ウィズコロナ時代の社会経済活動の在り方を検討します。
総裁選を通じて、私はコロナとの闘いにどう取り組むのかについて、できるだけ丁寧にお話していきます。
国民との3つの約束
私は、民主主義を守り抜くために、国民の皆さまに、三つの約束をします。
第1に、民主主義で最も大切な「国民の声」を丁寧に聞いていきます。これを全ての出発点にします。私自身が、現場に足を運び、国民の皆さまの声を聞き、政策に反映していきます。
第2に、個性と多様性を尊重する社会を目指します。
多様性こそ民主主義が体現する価値です。若者も高齢者も男性も女性も、障害のある方も、失敗を経験した方も、全ての人が、それぞれの居場所を見つけて、生きがいを感じられる社会を目指します。
第3に、みんなで助け合う社会を目指します。
今回のコロナ禍をきっかけに、我々は改めて、家族や仲間との絆の大切さに気付きました。もちろん、自助の精神は大切です。しかし、人は、一人では生きられません。デジタル化が進む現代だからこそ、もう一度、家族・仲間・地域の絆、人の温かさが感じられる社会を目指します。これこそ民主主義が目指す社会です。
3つの政策
「国民の声を聞く政治」に転換した上で、政策面でも、「国民の生活を守り、国民の所得を増やす3つの政策」を約束します。
【コロナ対策】
第1にコロナ対策です。
コロナウイルスは非常に早いスピードで変異を続けおり、残念ながらこれをゼロにすることはできません。我々の当面の目標は、コロナウイルスを季節性インフルエンザと同様、従来の医療提供体制の中で対応可能なものとし、通常に近い経済社会活動を一日も早く取り戻すことです。
そのためには、ワクチン接種の加速と治療薬の普及が必須です。そして、それが達成されるまでは、①徹底した人流の抑制、②病床・医療人材の確保、③経済対策に全力で取り組む必要があります。
特に、現在流行しているデルタ株は、感染力が格段に高く、医療現場は限界寸前です。「感染したら入院できないかもしれない」。国民の不安の声を一刻も早く解消し、命を守り抜いていかなくてはなりません。
そのため、可及的速やかに、政府・地方自治体に法律上与えられた権限をフル活用します。国民の皆さまにより強く人流抑制をお願いします。また、国公立病院における重症者用病床の確保、野戦病院の設置や大規模宿泊施設の年内借上げによる中軽症者用病床確保などに強力に取り組みます。併せて、医療人材の確保に全力をあげ、医師会をはじめ開業医の先生方に、より積極的に診察頂けるよう強くお願いします。
また、学校で感染拡大しないよう、緊急事態宣言地域の中で、特に感染拡大している地域では、教育委員会単位で一斉休校を要請します。その際は、児童生徒の学びの保障や心身への影響に十分配慮し、学校現場や保護者への全面的な支援を行います。併せて、学校において定期的な抗原検査を行える体制を早急に整備し、コロナ禍でも学校が運営できるよう最大限の配慮を行います。
そして、皆さまに安心して人流抑制にご協力いただけるよう、早急に相当規模の経済対策をとりまとめます。具体的には、事業者向けに、地域や業種を限定せず事業規模に応じた固定費支援を行います。また、女性、非正規など大きく影響を受けている皆さまへ支援を拡充します。
その上で、ワクチン接種については、更なるスピードアップと、新規感染者の抑制をバランスよく進めることが求められます。第1回目の優先接種の検討とともに、若い世代の接種率向上に全力を挙げる必要があります。また、民間とも連携し、ワクチンパスポート等のインセンティブを付与することで、接種率向上に全力を傾注します。
治療薬については、足元の感染拡大に対し、抗体カクテル療法の供給量の拡大に全力を傾けるとともに、有効性が指摘される治療薬の活用を進めます。そして、最大の決め手は、より利便性の高い、飲み薬です。製薬メーカーと連携し、年内の経口薬の普及に全力で取り組みます。
勿論、こうした取り組を通じ、コロナウイルスが従来の医療体制で対応可能となっても、ウイルスは変異を繰り返すため、安易な楽観論に陥ることなく、臨機応変な対応が必要です。例えば、下水中のウイルス濃度の解析等の最先端技術や水際での探知などにより、感染の発生・流行状況を追跡し、先手先手の対策を講じます。また、経済社会活動の正常化に向けて電子的なワクチン接種証明を積極的に活用します。
以上、国民の命と健康の確保を最優先にしながら、通常に近い経済社会活動を取り戻すというゴールに向けて、国民の皆さまと共に道筋を共有し、歩んでいきます。
なお、人流の抑制、病床・医療人材の確保については、国・地方自治体が、より強力に取り組めるよう法改正を検討します。ウィズコロナの期間が長期化する可能性が高いことから、交通、物流、教育などの幅広い分野の専門家が一同に会する新たな専門家組織を立ち上げ、ウィズコロナ時代の社会経済活動の在り方を検討します。
【新しい日本型の資本主義】
第2に、新しい資本主義の構築です。
ポストコロナにおける成長と安心を実現するため、「成長と分配」の好循環による「新しい日本型の資本主義」を具現化してまいります。
経済には、「成長」と「分配」の両面が必要です。成長がなければ分配はなく、国民は豊かになりません。しかし、分配が適切になされなければ、消費の盛り上がりはなく、次の成長につながりません。
小泉政権以降進められてきた新自由主義的政策は確かに我が国経済の体質強化と成長をもたらしました。しかし、その一方で、富める者と富まざる者の分断なども生じています。人は成長だけでは幸せを感じられません。また、コロナにより格差は拡大しています。今こそ成長と分配の好循環による「新しい日本型の資本主義」を構築する時です。
先ず、成長については、政府として、長期的な視点に立って、頑張る民間企業の挑戦を大胆に支援し、成長を促進します。その鍵は、「科学技術&イノベーション」です。かつて、科学技術担当大臣を務めたものとして、産学官連携による科学技術&イノベーションを政策の中心に据えます。そして、経済安全保障にも留意しつつ、来年度に10兆円規模の大学ファンドを設立するなど、グリーン、人工知能、量子、核融合、バイオなど先端科学技術の研究開発に大胆に投資します。また、次世代産業の国内立地を進め、新たな産業と雇用を生み出していきます。
また、長年、党内において商工政策に携わってきたものとして、産業分野毎にリーディングカンパニーの再編・集約・構築を促す一方、スタートアップを徹底的に支援するなど、攻めの産業政策をとってまいります。
次に、分配については、先ず、民間における分配を強化していく必要があります。最近の日本企業を見ていると、足下で利益が出ても、賃上げを十分に行わず、配当を増やすなど短期的な利益を追求するようになっています。結果的に、国民の所得や消費が伸びず、企業の利益も伸び悩む、という悪循環に陥っています。やはり、経営者が長期的な視点に立って、従業員や取引先を大事にしながら、「3方良し」の精神で、共存共栄の資本主義を作っていくべきではないでしょうか。
このため、企業が長期的視点にたって経営出来るよう、四半期開示の見直しやサプライチェーンにおける下請け取引の適正化など、経済社会の基本的なルールの見直しを検討します。
こうした民間における取り組みを補完するのが、公的な分配です。「成長と分配の好循環」の中で取り残されている方々がおられます。中間層の拡大に向け、分配機能を強化し、所得を引き上げる、「令和版所得倍増」を目指します。特に、若い子育て世代の所得が伸び悩むなか、コロナ禍で出生率も一段と低下しています。子どもは我が国の未来そのものであり、子育て世帯への支援は喫緊の課題です。成長の果実を実感できない皆さま・子育て世帯にとって大きな負担となっている住居費、教育費について、支援の強化を検討します。
更に、成長の果実を、都市部・大企業のみならず、地方・中小企業に分配することが大切です。新しい資本主義の象徴は地方です。地方の復活に向けて、5Gなどのデジタルインフラの整備を進め、都市と地方の物理的距離を乗り越える「デジタル田園都市国家構想」を進めます。久しく言われながら「東京一極集中是正」は進んできませんでしたが、コロナの影響で、今まさに「集中から分散」が国民全体に共有されています。今後の首都直下型地震への備えも考えれば、今しかありません。テレワークなどデジタルの力も活用しながら、誰もが故郷と首都圏を行き来できるような二地域生活の振興も進めます。
また、小さな例ですが、全国各地で商工会や自治会への予算が削られています。しかし、こうした地域を支える枠組みにこそ予算を適切に配分していかなければなりません。地域の祭りがコロナで壊滅的な影響を受けています。祭りは地域の絆そのものです。再開に向けてしっかりと支援していきます。もちろん、地域そして国土・国民生活を支える農林水産業に対する支援にも万全を期します。地方・地域こそ、国民の声を聞く、ボトムアップの政治を実現する、実装の場です。徹底してきめ細かな政策を積み上げていきます。
【外交・安保における3つの覚悟】
第3に国民を守り抜く外交・安全保障です。世界の平和・我が国の安全が脅かされれば、最も影響を受けるのは弱い立場の皆さまです。世界の平和と我が国の安全は断固守り抜かねばなりません。そのために、3つの覚悟を持って臨んでまいります。
まず、自由、民主主義、人権、法の支配といった基本的価値を守り抜く覚悟です。民主主義を脅かす権威主義、独裁主義的体制が拡大し、我が国は国際的価値観の対立の最前線にあります。台湾海峡の安定、香港の民主主義、ウィグルの人権問題などは、その試金石です。我が国は、米国や欧州、インド、豪州、台湾など、基本的価値を共有する国・地域との連携により、自由で開かれたインド太平洋の国際秩序を強化し、自由・民主主義の灯火を高々と掲げていきます。
次に、我が国の領土・領海・領空を守リ抜く覚悟です。我が国周辺の安全保障環境は厳しさを増しています。海上保安庁の能力強化、自衛隊との連携強化、国家安全保障戦略の改定、インテリジェンス機能の充実などに全力で取り組みます。
そして、地球規模課題において世界を主導し人類に貢献する覚悟です。地球温暖化問題、核軍縮・不拡散、宇宙・海洋の開発・利用、災害対策などの地球規模の課題において、我が国は、国際的合意やルールの形成そして課題解決に向けて、リーダーシップの発揮が求められています。特に、先ほども申し上げた、我が国が世界に誇る科学技術・イノベーションを通じて積極的に貢献していきます。
以上のとおり、「国民の声を聞く政治」に転換し、「国民の生活を守り、国民の所得を増やす3つの政策」を進めることが、私の公約であります。
この他にも、「活き活き健康長寿社会」に向けた社会保障制度改革、「時代の変化に対応した憲法改正」などに取り組んでまいりますが、本日は割愛をいたします。
なお、今回の総裁選はコロナ禍で行われるものです。今、この瞬間も、国民の皆さまにはコロナとの闘いで大変なご苦労をおかけしております。そうした中、総裁選で論戦を戦わせることについては、率直に心苦しく思います。しかし、コロナとの闘いに、国民の皆さまのご協力を頂き、勝ち抜いていくためにも、総裁選挙を有意義なものにしてまいります。
勿論、コロナ禍でもありますので、私自身は、徹底したリモートでの活動に終始してまいります。ご理解の程、何卒宜しくお願い致します。