参議院選挙の結果を受けて
大変厳しい選挙戦でしたが、昨日、有権者の皆さんの判断が示されました。
非改選を含め、与党で過半数の議席を確保するという目標を大きく超え、与党で、改選前議席数を上回る76議席という結果を得ることができました。また、自民党単独でも、63議席をいただくことができました。
今回の選挙において問われたのは、新型コロナ、ウクライナ、物価高と、時代を画するような出来事が続く中、政治の安定を実現し、様々な課題を乗り越え、新しい時代を切り拓くことができるのは誰なのか、どの政党なのか、ということでありました。
選挙戦を通じて私自身が肌身で感じ、最も心に残っているのは、国民の皆さんが、「今我々は、大きな時代の曲がり角にいる」という感覚を持ち、日本や世界の未来に不安を感じながらも、この国の未来を託すにふさわしい候補者を、政党を、選び抜こうとされている真剣なまなざしです。
頂いた議席の数が示すのは、自公政権、岸田内閣に対する信任だけではありません。
遊説中に卑劣な暴力により亡くなられた安倍元総理のこの国への思いや、自分たちが感じている危機感を正面から受け止めて、「日本を守り、未来を切り拓く」ために、「全力で仕事を進めよ」との、国民の皆さんから「叱咤激励」をいただいたと、覚悟を新たにしております。
今回の選挙では、遊説中に、安倍元総理が、暴漢に襲われ、命を落とされるという衝撃的な事件が起こりました。
改めて、心からご冥福をお祈りするとともに、憲政史上最長となる8年8ヶ月もの間、内閣総理大臣、自民党総裁として、卓越したリーダーシップと行動力をもって、この国を導いてこられた安倍元総理が、残された様々な御功績に敬意を表し、哀悼の誠を捧げたいと思います。
暴力が、突然、世界から愛された偉大なリーダーの命を奪ったこと。悔しくてたまりません。しかし、一番悔しかったのは、日本を取り巻く環境が大きく変わり、内外の課題が山積する中で、凶弾に倒れた安倍元総理御自身だったと思います。
安倍元総理の思いを受け継ぎ、特に情熱を傾けてこられた拉致問題や、憲法改正など、御自身の手で果たすことができなかった難題に取り組んでまいります。
そして、安倍元総理が残された様々な御功績の上に、さらなる取組を進め、安倍総理が愛した、また、我々も愛する、この日本という国を、より明るく元気なものとして、次の世代に引き継いでいかなければなりません。
そのために、与党は、そして、自民党は、覚悟を新たに、一致結束し、日本という国の繁栄と安心を確保していくという使命に邁進してまいります。私自身が、その先頭に立ってまいります。
新型コロナを乗り越え、コロナ前に戻すだけではなく、新しい時代にふさわしい経済社会を作り上げていく。
ロシアによるウクライナ侵略で終わりを告げた、ポスト冷戦時代の次の時代にふさわしい、新しい国際秩序を作っていく。
もちろん、目の前で進みつつある物価高にも、政府が責任を持って万全の対応をしていきます。
こうした一つ一つの課題が、数十年に一度あるかないかの大きなものです。今の日本は、そうした大きな課題が、幾重にも重なりあい、それらに正面から取り組んでいかなければならない「戦後最大級の難局」にあると考えています。
こうした難局を乗り越えていくためには、平時ではない、いわば「有事の政権運営」が求められます。
「聞く力」を発揮して、与野党問わず幅広い視点や、現場の様々な意見を踏まえ、大胆で機動的な政策を立案する。
そのうえで、総理大臣たる私を中心に、政治がすべての責任をもって「決断」し、行政を動かして徹底的な「実行」を図る。
そして、こうした政権運営の基盤となるのは、国民の皆さんの「信頼と共感」です。
この「聞く力」と「決断と実行」を政権運営の両輪として、与党内で幅広く「一致結束」の体制を固め、国民の皆さんの「叱咤激励」を背に、全力で難局の突破に取り組んでいく決意です。
そうした思いを持って取り組む様々な政策課題について、当面の対応方針を簡潔に御説明したいと思います。
まず、新型コロナ対応です。
足下で、オミクロン株の変異種によって、全国の新規感染者数は増加に転じています。こうした状況に不安を感じている方もおられると思います。
政府・自治体では、こうした状況が起こり得ることを想定し、強化してきた医療体制を維持しています。
そうした中、病床使用率、重症病床使用率は総じて低水準にあります。
病床の確保、ワクチン接種、検査の拡大、治療薬の確保といった対策を講じ、感染を封じ込めてきましたが、今後も同様の取組を点検・強化することで対応していきます。
引き続き、「平時への移行の道を、慎重に歩んでいく」との方針の下、感染拡大の防止と経済社会活動の両立に心を砕きながら、対応していきます。
次に、ロシアによるウクライナ侵略です。
世界のどこであっても、武力による一方的な現状変更を起こしてはならない。この強い思いから、今回の選挙期間中も、G7やNATOの首脳会合に出席するなど、首脳外交を積極的に進めてきました。
ポスト冷戦後の新しい時代が幕を開けようとする中、来年、我が国は、G7広島サミットを主催します。G7議長国の重責を担い、普遍的価値と国際ルールに基づく、新たな時代の秩序づくりをG7が主導していく意思を、歴史の重みを持って示していきます。
一部のアセアン諸国やアフリカ諸国など、ロシアとの過去の経緯や経済的つながりを背景に、中間的な立場をとっている国々に、日本ならではの働きかけを全力で行っていきます。
日米同盟の抑止力・対処力の一層の強化、同志国との連携強化を進めると同時に、いわゆる反撃能力も含め、あらゆる選択肢を排除せず現実的に検討し、年末までに新たな国家安全保障戦略などを策定し、我が国自身の防衛力を5年以内に抜本的に強化していきます。
第三に、世界的な物価高への対応です。
G7サミットでは、世界的な規模で起こっているエネルギー、食料をはじめとする世界的な物価高騰の原因は、ロシアのウクライナ侵略にあるとの認識で一致しました。
こうした事態に対しても、G7は結束し、連携して対応していきます。ロシア産原油を、一定の上限価格以下でしか、買わないための仕組みづくりや、世界の食糧庫と言われるウクライナの小麦輸出を再開させるための様々な支援を行っていきます。
もちろん、国内の皆さんが、現に起こっている物価高の中で苦しんでいる。こうした状況に対しては、政府が責任を持ってしっかりと対応していきます。
1兆円の地方創生臨時交付金を活用した、地域の実情に応じたきめ細かな支援や、燃料費や電気料金の負担軽減、肉、パン、麺といった食品の価格抑制に向けた取組など、日本の物価上昇のほとんどを占めるエネルギーや食料に集中した対策を、私が本部長を務める「物価・賃金・生活総合対策本部」を中心に、緊張感を持って進めます。
早速、今週中に本部を開催することとし、5.5兆円の予備費の機動的な活用など、物価・景気の状況に応じた、迅速かつ総合的な対策に切れ目なく取り組んでいきます。
第四に、エネルギーの安定供給確保です。
6月末から、観測史上初が続出する猛暑が続き、先月末には、東京電力エリアにおいて、需給ひっ迫注意報が出される事態になりました。しかし、今、政府からの要請も踏まえ、全国で10以上の火力発電所が次々と運転を再開し始めています。こうした取組により、今週は、全国的に10%を超える予備率確保の見通しであるなど、この夏は、安定供給に必要となる水準を確保できる見通しです。
熱中症も懸念されるこの夏は、無理な節電をせず、クーラーを上手に使いながら、乗り越えていたただきたいと思います。
第五に新しい資本主義の実現です。
私は、これからの経済政策で最も大切なことは、持続可能で包摂的な経済を作り上げていくことだと考えています。
そのために重要なことは、まずは賃上げを含む人への投資であり、民間が賃金を引き上げやすい雰囲気をつくっていきます。今年の春闘では、過去20年間で二番目に高い水準の賃上げを実現することができました。こうした流れを継続させていくために全力を尽くします。
そして、持続的な賃上げの原資を生み出すためにも、力強い成長を実現していかねばなりません。私は、科学技術・イノベーション、スタートアップ、デジタルや脱炭素といった社会課題に官民の投資を集めることで、これらの社会課題を成長のエンジンへと転換していくことで、成長を実現させていきます。
既に、新しい資本主義の実行計画を公表しています。ここで掲げた方針に沿って、私のビジョンを実現させていきます。
そして、最後に憲法改正について申し上げます。
憲法の改正は、自由民主党結党以来の党是であり、近年の国政選挙においては、必ずこの憲法改正を公約に盛り込み、選挙戦を戦ってきました。今回も、憲法改正の早期実現を公約に掲げ、この選挙を戦いました。
自由民主党が掲げる、自衛隊の明記、緊急事態対応、参議院の合区解消、教育充実という、4項目の改正項目は、いずれも現代的な課題であり、この党是の実現に向け、国会での議論をリードしていきたいと思います。
秋に予定される臨時国会では、今回の選挙で示された民意を受けて、与野党全体で一層活発な議論が行われることを強く期待します。
同時に、憲法改正は、最終的に国民の皆さんが決めることであり、全国各地で対話集会を開催するなど、国民の皆さんの御理解を得るための活動に積極的に取り組んでいきます。
今回の選挙で、私は、「政治の安定」こそが、この困難な時代を乗り越え、日本の未来を切り拓いていくために必要不可欠だということを強く訴えてまいりました。
そして我々は、昨日、国民の皆さんから、安定した政権運営を行っていくための力をいただきました。
与えていただいたこの力で、政治の安定を実現させ、「国民のくらしを守り抜き、明日の日本を切り拓く」ため、全身全霊で職責を果たしてまいります。
国民の皆さんとともに、この難局を乗り越えていきたい。信頼と共感を社会に取り戻していきたい。国民の皆さんにも御協力をお願いいたします。