厚生労働委員長として
六月十八日、第164回通常国会が閉会しました。一月二十日からの150日間の開会でありましたが、今回の国会も重要な法案や議案がたくさん提出され、そして可決成立致しました。
その中でも今回委員長を務めました厚生労働委員会は、医療・年金・介護・福祉・雇用等々、非常に守備範囲が広く、重要案件が山積している委員会です。
衆議院に提出された全法案は百三十一本でしたが、うち厚生労働委員会に付託された法案は二十五本にものぼりました。衆議院には二十五の委員会がありますから、平均すると一委員会辺りの法案数は五~六本、委員会の中でも議院運営委員会のように法案を審議しない委員会もありますので、そのような委員会を除いたとしてもだいたい平均八~九本ですから、二十五本も扱った厚生労働委員会の法案の多さは際だっていると言えるのではないでしょうか。
さらに今国会での委員会開催日は三十二日(地方公聴会二日)で、総審議時間は約百二十時間にも及びました。
厚生労働委員会には、国民の生活に密着し、また利害にも直結する案件が多いですから、それらの国民の利害とシステムの整合性やあるいは持続可能性などを考え、それらがしっかりと確保できるようバランスをとっていかなければなりません。国会開会中限られた時間でありましたが、出来るだけ丁寧に議論がされるよう、委員長として委員会運営等、職責を果たしてきたと思っております。
そんな法案の中でも国民から注目された法案は、やはり「医療制度改革関連法案」でしょう。
いわゆる医療制度改革関連法案と呼ばれた改革法案の一つが「健康保険法等の一部を改正する法律案」です。この法律は、国民皆保険を堅持し、将来にわたり医療保険制度を持続可能なものとしていくため、医療費適正化の総合的な推進、新たな高齢者医療制度の創設、保険者の再編・統合等所要の措置を講ずるものです。
具体的な方策としましては
・生活習慣病対策や長期入院の是正など中長期的な医療費適正化のための医療費適正化計画の策定
・保険給付の内容・範囲の見直し
・介護療養型医療施設の廃止
・後期高齢者(75歳以上)を対象とした後期高齢者医療制度の創設
・前期高齢者(65歳~74歳)の医療費に係る財政調整制度の創立
・国保財政基盤強化策の継続、保険財政共同安定化事業
・政管健保の公法人化
・地域型健保組合の創設
・中医協の委員構成の見直し、団体推薦規定の廃止等所要の見直し
などがあります。
中でも特に、高齢者の患者負担の見直しについては様々なところから多くの方のご意見をいただき、国会の内外で広く議論をされました。
衆議院の厚生労働委員会におきましても、この関連法案に対して三十五時間もの時間をかけて審議を行いました結果、70歳以上の高齢者のうち、現役並みの所得者については現役と同様の三割負担、そうでない70歳から74歳までの高齢者は二割負担、そして75歳以上の現役並みの所得でない高齢者には一割負担とする、などを盛り込みました医療改革関連法案を、残念ながら野党の賛成は得られませんでしたが、与党の賛成多数によって可決されました。
この関連法案をはじめ様々な重要法案・重要案件が多く、今国会でも重要な位置づけとされた厚生労働委員会という委員会の委員長を今回務めさせていただき、委員長という職責の重要さや大変さ、責任の大きさを痛感させられた150日間でありました。
委員会の審議時間は合計で約百二十時間でしたが、この他にも委員会の前には必ず理事会が開かれ、今後の委員会の開会日程や取扱い議案の決定等を話し合います。
また理事会においてこれらの問題が与野党で合意されなかった場合には、委員会が開会されない日でも理事懇談会という形で委員会運営について話し合いがされます。
委員会が朝九時から夕方五時あたりまで一日中開会されるということはよくありましたが、重要法案の取扱いをめぐり理事懇談会が一日中断続的に行われたこともよくありました。
委員長という立場である以上、中立の立場で公正に委員会を運営しなければなりませんが、やはり与党と野党の間では意見の違いによって対立することもあります。特に医療改革関連法案などの重要法案になりますと、それが明確に激しくなり、なかなか審議が続けられないという場面も多々ありました。
しかし時間は限られています。意見の対立がある場合には議論によってその差を埋めていくというのは原則ではありますが、限りある時間の中では場合によっては民主主義の基本的なルールである多数決によって決を採らざるを得ないこともあり、委員長という役職の難しさを痛感させられた国会でした。