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活動報告

核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン

2023年5月19、広島において「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」を発出しました。
以下、仮訳を掲載します。
原文(英語)はこちらからご覧ください


核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン
(2023年5月19日 於:広島)

歴史的な転換期の中、我々G7首脳は、1945年の原子爆弾投下の結果として広島及び長崎の人々が経験したかつてない壊滅と極めて甚大な非人間的な苦難を長崎と共に想起させる広島に集った。粛然として来し方を振り返るこの時において、我々は、核軍縮に特に焦点を当てたこの初のG7首脳文書において、全ての者にとっての安全が損なわれない形での核兵器のない世界の実現に向けた我々のコミットメントを再確認する。

我々は、77年間に及ぶ核兵器の不使用の記録の重要性を強調する。ロシアの無責任な核のレトリック、軍備管理体制の毀損及びベラルーシに核兵器を配備するという表明された意図は、危険であり、かつ受け入れられない。我々は、ロシアを含む全てのG20首脳によるバリにおける声明を想起する。この関連で、我々は、ロシアのウクライナ侵略の文脈における、ロシアによる核兵器の使用の威嚇、ましてやロシアによる核兵器のいかなる使用も許されないとの我々の立場を改めて表明する。我々は、2022年1月3日に発出された核戦争の防止及び軍拡競争の回避に関する五核兵器国首脳の共同声明を想起し、核戦争に勝者はなく、また、核戦争は決して戦われてはならないことを確認する。我々は、ロシアに対し、同声明に記載された諸原則に関して、言葉と行動で改めてコミットするよう求める。我々の安全保障政策は、核兵器は、それが存在する限りにおいて、防衛目的のために役割を果たし、侵略を抑止し、並びに戦争及び威圧を防止すべきとの理解に基づいている。

冷戦終結以後に達成された世界の核兵器数の全体的な減少は継続しなければならず、逆行させてはならない。核兵器不拡散条約(NPT)は、国際的な核不拡散体制の礎石であり、核軍縮及び原子力の平和的利用を追求するための基礎として堅持されなければならない。我々は、全ての者にとっての安全が損なわれない形で、現実的で、実践的な、責任あるアプローチを通じて達成される、核兵器のない世界という究極の目標に向けた我々のコミットメントを再確認する。この点に関し、日本の「ヒロシマ・アクション・プラン」は、歓迎すべき貢献である。我々は、新戦略兵器削減条約(新START)を損なわせるロシアの決定を深く遺憾に思うとともに、ロシアに対して、同条約の完全な履行に戻ることを可能とするよう求める。同時に、中国による透明性や有意義な対話を欠いた、加速している核戦力の増強は、世界及び地域の安定にとっての懸念となっている。

我々は、核兵器に関する透明性の重要性を強調し、米国、フランス及び英国が、自国の核戦力やその客観的規模に関するデータの提供を通じて、効果的かつ責任ある透明性措置を促進するために既にとってきた行動を歓迎する。我々は、まだそうしていない核兵器国がこれに倣うことを求める。我々はまた、透明性を促進するために、まだそうしていない核兵器国に対し、将来のNPT関連会合における、非核兵器国及び市民社会の参加者との双方向の議論とともに行われる国別報告書についての開かれた形での説明を通じたものを含め、非核兵器国と核戦力及び核軍備競争の制限に関する透明性についての有意義な対話を行うことを求める。この観点から、我々は、リスク低減への実質的な貢献として、関連する戦略的活動の事前通告の利点を強調する。G7は、戦略的リスクを低減するための核兵器国による具体的な措置の必要性を認識する。我々は、中国及びロシアに対し、第6条を含むNPTの下での義務に沿い、関連する多国間及び二国間のフォーラムにおいて実質的に関与することを求める。

我々は、長きにわたって遅延している、核兵器又は他の核爆発装置に用いるための核分裂性物質の生産を禁止する条約の即時交渉開始を求める。2023年は、核兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)を求める国連総会決議のコンセンサス採択から三十年目の年に当たり、我々は、核軍備競争の再発を阻止するための優先行動として、あらゆる個別の、又は補完的な取組を含め、FMCTへの政治的関心を再び集めることを全ての国に強く求める。この点に関し、我々は、まだそうしていない全ての国に対し、核兵器又は他の核爆発装置に用いるための核分裂性物質の生産に関する自発的なモラトリアムを宣言又は維持することを求める。

我々は、いかなる国もあらゆる核兵器の実験的爆発又は他の核爆発を行うべきではないとの見解において断固とした態度をとっており、それを行うとのいかなる威嚇も非難し、包括的核実験禁止条約(CTBT)の発効もまた喫緊の事項であることを強調する。我々は、CTBTが法的拘束力を持つまでの間、核爆発実験に反対するグローバルな規範を堅持することに引き続きコミットし、全ての国に対し、核兵器の実験的爆発又は他のあらゆる核爆発に関するモラトリアムを新たに宣言すること、又は既存のモラトリアムを維持することを求める。我々は、核実験を行う用意があるとのロシアの発表に懸念を表明し、ロシアによる核実験モラトリアムの遵守を求める。我々はさらに、包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)準備委員会が世界中の核爆発が疑われるものの探知及び報告を行う上で果たす不可欠な役割を強調する。G7は共同で、2023年に1億米ドル以上の額でCTBTOの活動を支援している。我々は、CTBTの検証体制の全ての要素の継続的な運用と長期的な持続可能性を確保するために十分な資源を提供するというG7のコミットメントを再確認し、他の者に対し同様の行動を求める。

核兵器のない世界は、核不拡散なくして達成できない。我々は、関連する国連安保理決議に従った、核兵器及び既存の核計画、並びにその他の大量破壊兵器及び弾道ミサイル計画の、北朝鮮による完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な放棄という目標への揺るぎないコミットメントを改めて表明する。我々は、北朝鮮に対し、核実験又は弾道ミサイル技術を使用する発射を含め、不安定化をもたらす、又は挑発的ないかなるその他の行動をも自制するよう求める。北朝鮮は、NPTの下で核兵器国の地位を有することはできず、有することは決してない。北朝鮮の大量破壊兵器及び弾道ミサイル計画が存在する限り、制裁は、全ての国によって完全かつ厳密に実施され、維持されることが極めて重要である。我々は引き続き、信頼に足る民生上の正当性がなく、実際の兵器関連の活動に危険なほどに近づいているイランの核計画の継続したエスカレーションを深く懸念している。我々は、イランが決して核兵器を開発してはならないとの我々の明確な決意を改めて表明し、全ての国に対し、国連安保理決議第2231号の履行を支持するよう求める。我々は、イランに対し核エスカレーションを停止するよう強く求める。我々は、イランに対し、更なる遅滞なく、核不拡散に関する法的義務及び政治的コミットメントを果たすよう求める。イランの核計画に関する国際的な懸念を解消するためには、外交的解決が引き続き最善の方法である。この文脈において、包括的共同作業計画(JCPOA)は、引き続き、有益な参考である。我々は、イランに対し、迅速かつ具体的な行動により、保障措置に関する義務及び表明されたコミットメントを遵守することを求める。我々は、イランにおける国際原子力機関(IAEA)の重要なマンデートと取組を称賛し、引き続き全面的に支援する。

この不確実性と緊張の時代において、既存の体制やその他のグローバルな取組を維持し、資源を投入し、強化することは最も重要である。我々は、全ての国に対し、次世代原子力技術の展開に関連するものを含め、原子力エネルギー、原子力科学及び原子力技術の平和的利用を促進する上で、保障措置、安全及び核セキュリティの最高水準を満たす責任を、真剣に果たすよう強く求める。我々はさらに、ロシアによるウクライナの原子力施設を管理しようとする試みに深刻な懸念を表明する。これは、原子力安全及び核セキュリティ上の深刻なリスクをもたらすものであり、原子力の平和的利用の追求というNPTの下でのウクライナの権利を完全に無視するものである。我々は、核不拡散体制の基本的な構成要素として、IAEAの最高水準の保障措置の実施及び追加議定書(AP)の普遍化の重要性を再確認する。我々は、APの適用を含む核不拡散の最高水準に従って、信頼できかつ責任ある原子力サプライチェーンを促進する。我々は、原子力供給国グループ(NSG)のガイドラインにおいてAPを供給の条件とすることに向けた同グループ内での更なる議論を支持する。原子力発電又は関連する平和的な原子力応用を選択するG7の国は、原子力エネルギー、原子力科学及び原子力技術の利用が、低廉な低炭素のエネルギーを提供することに貢献することを認識する。G7は、医療や同位体水文学などの分野における原子力技術の応用の、繁栄の促進及び国連の持続可能な開発目標の取組への貢献に留意する。我々は、二十年以上にわたり、世界各地において核不拡散を推進するための具体的で影響力のあるプログラムを提供してきた、G7が主導する大量破壊兵器及び物質の拡散に対するグローバル・パートナーシップへの最大限のコミットメントを改めて表明する。

我々は、民生用プルトニウムの管理の透明性が維持されなければならないことを強調する。我々は、民生用プログラムを装った軍事用プログラムのためのプルトニウムの生産又は生産支援のいかなる試みにも反対する。かかる試みは、原子力の平和的利用の促進を含むNPTの目的を損なうものである。この点に関し、我々は、プルトニウム管理指針(INFCIRC549)の実施の重要性を強調する。我々は、平和的原子力活動における全てのプルトニウムの保有量をIAEAに年次報告することにコミットした全ての国に対し、かかるコミットメントを履行することを求める。我々は、同指針の対象となるプルトニウムに関するものと同様の責任を持って、高濃縮ウランの民生保有量を管理する必要性を認識する。また、我々は、世界中の兵器利用可能な核物質の民生目的での生産と蓄積を削減するための取組を優先することにコミットする。

我々が望む世界を実現するためには、その道がいかに狭いものであろうとも、厳しい現実から理想へと我々を導く世界的な取組が必要である。この点に関し、我々は、軍縮・不拡散教育やアウトリーチの重要性を強調する。我々は、広島及び長崎で目にすることができる核兵器使用の実相への理解を高め、持続させるために、世界中の他の指導者、若者及び人々が、広島及び長崎を訪問することを促す。この目的のため、我々は、日本による「ユース非核リーダー基金」、P5の「ヤング・プロフェッショナル・ネットワーク」、ドイツにより資金提供された「軍縮のための若者チャンピオン」及びEU不拡散・軍縮コンソーシアムが設立した「若い女性たちによる次世代イニシアティブ」などのイニシアティブや、軍縮・不拡散のプロセスへの市民社会の関与に加え、女性の完全で、平等で、意義ある参加を支援する他のイニシアティブを歓迎する。

(了)