今年の重要な課題について
今国会において平成30年度の97兆7000億円という大きな予算を議論しました。この予算は、284議席という大きな議席をいただいた昨年10月衆議院議員総選挙で約束した政権公約を、目に見える形で果たすものでもあります。
私は政権公約のとりまとめの責任者でしたが、例えば経済を考えても5年間のアベノミクスの取り組みにより、GDPや企業収益や雇用では、史上最高の数字を示すなど成果が上がっていますが、一方で地方や一人一人の国民からは経済成長の果実がなかなか実感として感じられないという声を聞きます。よってこうした成長の果実を国民に感じてもらうには後何が足りないかを、この選挙で訴えました。
成長の果実を感じてもらうには、日本の社会や企業の生産性をより一段高めることで。果実を賃金に振り向けてもらい、所得の増加という形で成長の果実を感じてもらうことがまず大事です。そしてそのために生産性を高める努力、生産性革命を訴えたのですが、こうした生産性を高めて所得を高め、賃金を上げていくことにつなげたあとは、しっかり消費してもらいお金を使ってもらうことで、成長・所得・消費の経済の好循環を完成させるべく努力しないとなりません。
消費には将来不安があってはなりません。その最大の課題は少子高齢化であり、しっかり取り組んでいきます。そのためには財源が必要です。そのため総選挙においては消費税の増税分の使い道を変えようではないかと訴えました。
これが昨年の選挙の経済分野の基本的な考え方です。予算の中で生産性革命、人づくり革命、さまざまな取り組みを具体的な数字、形にして国民に届ける、こうした予算が平成30年度予算ですし、これが成立することこそ最大の景気対策だと考えます。
また今年の政治課題として憲法改正も大きな課題となるでしょう。憲法改正についても去年の衆院選で国民の皆様に約束をしました。憲法改正については、今の憲法の三つの基本的原則、「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」は変えません。そしてその上で四つの項目について議論を進めていくことを約束しました。
一つは自衛隊を憲法にしっかりと明記すべきという問題。二つ目は災害はじめとする緊急事態で政府はどういう対応をするかという問題。三つ目は教育の自由化と充実強化の問題。そして四つ目として1票の格差にも関わる問題ですが、参院の合区の問題です。ぜひこれから自民党の中でも丁寧に意見集約し、国会で議論して、国会として発議し国民投票の手続きを進めなければならないと思っています。
最後は国民の皆さんに判断してもらわないといけません。よって、自民党の議論も多くの国民に見てもらって、聞いてもらって、理解を深めてもらうことが大事だと思っています。憲法改正の問題は時代と共に絶えず我々は考えなければなりません。時代の大きな変化の中にあって憲法に何が求められるかを絶えず考えていくことは大事なことだと思っています。だからこそ具体的な項目について丁寧な議論を行っていかなければなりません。
また財政再建も今年の大きな課題です。消費税増税分の使い道を、従来はより財政の安定に多くを費やす予定でしたが、それを縮小して人づくり革命等への財源をより大きくして改革を進めていくと先の総選挙で約束しました。しかしこれは日本の財政の安定はより厳しい結果になるということでもあります。政府は今年の骨太の方針に向けて財政安定化の道筋を明らかにすると表明していますので、自民党でも議論をリードしなければいけないということで財政再建特命委の下で議論を進めています。財政再建を巡る議論においては、経済再生を優先するか、財政再建を優先するかという議論が行われます。経済再生がなければ財政再建は実現できないという主張もあるし、財政再建がなければ将来の見通しが立たず消費も消極的になり経済再生は実現できないという議論もあります。
私は、二者択一でもなければ0か1かでもないと思っています。要はバランスが大切なのであり、それをどういった具体的な形としてまとめ、そして国民にしっかり説明できるものに仕上げられるかがポイントだと思っています。財政再建にこだわっていたら経済が萎縮するという人もいますが、財政再建の見通しがなければ、例えば景気対策のための財政出動ひとつとっても、見通しがないままで公共事業を強行すると不安を煽ることにもなりかねず、景気対策の機動性を奪ってしまうことにもなりかねません。こうした見通しだから今こういう取り組みを進めているんだと説明することこそが、持続可能な社会の維持に繋がるものと思います。
来年2019年は日本の国にとって正念場と言える大切な1年になります。来年4月30日には平成が終わり、即位の大礼など大きな国家的な行事が予定されており、世界中から来賓を迎えて、新しい時代がスタートします。また来年はG20の議長国を初めて日本が務めます。G20になると中国もインドもロシアも韓国もみんなトップが来ることになりますし、オブザーバーも含めると35カ国の首脳が来る大国際会議となります。またTICADも開催予定ですし、ラグビーW杯も日本で開催されます。そうした行事だけ考えても世界中から日本が注目を集めるわけで、治安や受け入れ態勢など様々な大きな課題を背負うことになります。
加えて来年は春統一地方選が予定されます。夏は参院選があります。12年に一度の同年選挙であり、政治的にも大切な年となります。さらに10月は消費税の引き上げが予定されており、消費税引き上げ直前に参院選と統一地方選を戦わなければならなりません。これは政権与党にとって大変難しい選挙が予想されます。
このように来年は日本の底力が試される年となります。ですから来年に向けて、今年は様々な政治課題を乗り越えて政治経済を安定させないといけません。
そして今年は自民党総裁選が予定されています。総裁選を通じて自民党も重要な2019年に誰をリーダーにして、どんな体制で臨むかを改めて考える貴重な機会にしなければいけなりません。
(季刊誌『翔』75号より)