Policies
岸田文雄の政策
賃上げを起点とした成長型経済の実現
岸田政権では、2021年から「新しい資本主義」を始動し、長年にわたり染み付いたデフレ心理を払拭し、「賃金が上がることは当たり前」という方向に、社会全体の意識を一気呵成に変えることで、「賃上げと投資がけん引する成長型経済」を実現することを目指しました。
賃上げに支えられた消費の増加は、企業収益を押し上げ、その成果が家計に還元されれば、次の消費の増加につながります。
企業はその収益を原資として成長分野に更に投資を行うことによって、企業の生産性と稼ぐ力が強化されます。
企業が賃金上昇を適切に価格に反映しつつ、安定的な物価上昇の下で、このように賃上げを起点とした所得と経済全体の生産性の向上を図り、賃金や価格をシグナルとして労働や資本が動く、市場経済本来のダイナミズムが発揮される「賃金と物価の好循環」の実現を目指すことが重要です。
「人への投資」と「新たな官民連携」をキーワードとする「新しい資本主義」の考え方のもと、岸田政権では、賃上げをコストではなく「人への投資」であると位置づけ、税制・価格転嫁などで前例のない後押しを進めました。
賃上げに関する「新たな官民連携」の枠組みとして、政労使の意見交換の場を活用し、「官も全力で努力を行う。
民も賃上げに協力してほしい」と、社会全体での賃上げの機運醸成に向けて粘り強く呼び掛けを行いました。
医療・介護を始め公的な分野で働く方々の賃上げに取り組み、最低賃金引上げの取組も進めました。
あわせて、持続的・構造的な賃上げの実現に向け、三位一体の労働市場改革を推進し、希望する非正規雇用の方々の正社員転換を含め、雇用の安定と質の向上に取り組みました。

取組
1. 賃上げ促進税制の抜本的拡充
企業が従業員の給与総額を増加させた場合、その増加額の一部を法人税等から税額控除できる「賃上げ促進税制」(賃上げを実現した企業への税制優遇)を抜本的に拡充しました。
中小企業向けには、賃上げ促進税制の対象となりうる企業として、中小企業全体の8割をカバーするよう、5年間の繰越控除制度を創設し、赤字法人であっても税制の恩恵を受けられるようにしました。
また、企業が予見可能性をもって賃上げを計画できるよう、税制の措置期間を従来の2年間から3年間に拡充しました。
大企業には、賃上げ率に応じた税額控除率にメリハリをつけ、段階的に7%までのさらに高い賃上げ率の要件(賃上げ5%で20%の税額控除、賃上げ7%で25%の税額控除)を創設することで、より一層高い賃上げを促しました。
中堅企業については、大企業とは別の新たな枠組みを創設し、4%賃上げで25%の税額控除(大企業は4%賃上げで15%の税額控除)といった緩やかな要件を設定しました。
さらに、教育訓練費を増加させた企業への税額控除の適用要件を緩和し、人材育成への投資を促進しました。
加えて、仕事と子育てとの両立支援(くるみん認定)や女性活躍支援(えるぼし認定)に積極的に取り組む企業には、税額控除率を5%上乗せする措置を創設しました。
2. 所得税・住民税の定額減税等による家計の可処分所得下支え
2024年6月からは、物価高を乗り越える途上にある賃上げを下支えするため、所得税・住民税の定額減税を実施しました。
これは、納税者およびその扶養親族1人につき、所得税3万円、住民税1万円の合計4万円が減税され、家計の負担を直接的に軽減するものです。
また、減税前の税額が少なく、定額減税を十分に受けられない方々には、補足的な給付を行うことで、物価高に直面する国民の皆様の可処分所得を確実に下支えすることとしました。
3. 労務費などの価格転嫁の強力なバックアップ
中小企業の賃上げに向け、価格転嫁を強力にバックアップしました。
事業者がサプライチェーン全体の付加価値向上、大企業と中小企業の共存共栄を目指す「パートナーシップ構築宣言」の更なる拡大と実効性向上に取り組んだほか、「価格交渉促進月間」を通して発注者と受注者の価格交渉を促進するとともに、サプライチェーン全体で適切な価格転嫁を定着させるため、独占禁止法の執行強化、下請Gメン等を活用しつつ事業所管省庁と連携した下請代金法の執行強化等に取り組みました。
特に、中小企業が賃上げを継続するためには、労務費上昇分を取引価格に反映できる環境が不可欠です。
2023年11月には、公正取引委員会等による「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」を策定しました。
発注者が指針に記載の12の採るべき行動/求められる行動に沿わないような行為をすることにより、公正な競争を阻害するおそれがある場合には、公正取引委員会が独占禁止法及び下請代金法に基づき厳正に対処していくとの、前例のない労務費転嫁対策をとることとしました。
4. 医療・介護・障害福祉分野、その他業種における賃上げ
各業界における賃上げに向けた取組を促進しました。
医療・介護・障害福祉等報酬の同時改定では、2024年度に+2.5%、2025年度に+2.0%のベースアップを実現するために必要な報酬改定を行いました。
この改定による加算措置等が最大限に活用され、医療・介護・障害福祉の現場での確実な賃上げにつながるよう、関係者へも粘り強く働きかけてまいりました。
建設業やトラック運送業については、改正建設業法と改正物流法に基づき、ガイドライン等を早期に示し、業界外も含めた周知の徹底、価格転嫁の円滑化を図るとともに、民間同士の取引についても、労務費の基準及び標準的運賃の活用を徹底しました。

5. 最低賃金の引き上げ
2023年10月、全国加重平均の最低賃金は、当時として過去最大の引上げ幅である43円の引上げにより、時給1,004円となり、初めて全国加重平均が1,000円の大台を突破することとなりました。
これにとどまることなく、公労使三者で構成する最低賃金審議会における毎年の議論の積み重ねを経て、2030年代半ばまでに全国加重平均の最低賃金が1,500円となることを目指す目標を定め、より早く達成できるよう、労働生産性の引上げに向けて、自動化・省力化投資の支援、事業承継やM&Aの環境整備に取り組むこととしました。
こうした目標のもと、2024年10月、全国加重平均の最低賃金は、前年の過去最大の引上げ幅をさらに更新する51円の引上げ幅により、1,055円となりました。
6. 労働市場改革の推進と雇用の安定・質の向上
賃上げを持続的・構造的なものとするため、「人への投資」を強化し、リ・スキリングによる能力向上支援、個々の企業の実態に応じたジョブ型人事(職務給)の導入、成長分野への労働移動の円滑化からなる、三位一体の労働市場改革を進めました。
具体的には、リ・スキリングによる能力向上支援については、教育訓練給付の給付率を最大70%から80%に引き上げるとともに、教育訓練休暇中の生活を支える新たな給付金を創設しました。
また、既に導入している多様な企業の事例を掲載した「ジョブ型人事指針」を2024年夏に公表するなど、個々の企業の実態に応じたジョブ型人事の導入を進めました。
成長分野への労働移動の円滑化については、自らの選択による離職の場合でも、すみやかに失業給付を受けられるよう、要件の見直しを行うとともに、求人・求職・キャリアアップに関する官民情報の整備・集約を進めました。
加えて、非正規雇用労働者について、希望者の正社員転換を促進するため、これを後押しする助成金(キャリアアップ助成金)を拡充しました。
都道府県労働局・労働基準監督署による同一労働同一賃金の更なる徹底を進めるとともに、各種手当等の待遇差是正に関する調査等を踏まえ、同一労働同一賃金ガイドラインの見直しの検討に取り組みました。
あわせて男女賃金格差の是正にも取り組み、女性の所得向上を通じてその活躍を支えるため、賃金差異の大きい業界における実態把握・分析・課題の整理を踏まえ、業界ごとのアクションプランの策定を促しました。
さらに、いわゆる「年収の壁」を意識せず働くことができるよう、「年収の壁・支援強化パッケージ」を策定し、その活用を促進したほか、被用者保険の適用拡大等の見直しに取り組みました。
成果
1. 歴史的な賃上げの実現
2024年春季労使交渉における賃上げ率は、連合の集計で5.10%と、1991年以来33年ぶりの高水準を達成しました。
| 項目 | 2024年度実績(連合集計) | 備考 |
| 春季労使交渉 賃上げ率(全規模) | 5.10% | 1991年以来33年ぶりの高水準 |
| 春季労使交渉 賃上げ率(全規模・ベア) | 3.56% | 集計を開始した2015年以降初めて3%超え |
| 春季労使交渉 賃上げ率(中小(300人未満)) | 4.45% | 1992年以来32年ぶりの高水準 |
| 春季労使交渉 賃上げ率(中小(300人未満)・ベア) | 3.16% | 集計を開始した2015年以降初めて3%超え |
賃上げの勢いが大企業のみならず、地域経済の担い手である中小企業にも着実に波及していることが示されています。
2. 賃金と物価の好循環
我が国は、30年に長きに及ぶデフレに悩まされてきました。
コストカットが最優先され、賃金を含めた「人への投資」や、下請・取引先企業の納入価格、未来の成長につながる設備投資や研究開発投資まで削減されてきました。
低い成長率と低い賃金の悪循環から抜け出せず、デフレ心理がまん延し、更なる悪循環を招いてきました。
2024年の春季労使交渉における33年ぶりの高水準となる賃上げ以外でも、過去最高水準の設備投資、600兆円を超える名目GDPなど一連の経済政策の成果が表れ、我が国は、30年間の長きにわたるデフレ経済から完全脱却する歴史的チャンスを手にしています。
「賃金と物価の好循環」に向けては、2024年6月には実質賃金が27ヶ月ぶりに対前年同月比プラスとなりました。
2024年度を通じては、対前年度比▲0.5%にとどまりましたが、主要国の実質賃金を国際比較する場合に用いられるベース(消費者物価指数の「総合」を用いて実質化)では対前年度比0.0%と横ばい(調査産業計の現金給与総額の対前年度比プラス3.0%と消費者物価指数の「総合」の対前年度比プラス3.0%が同水準)となり、定額減税等の効果もあって、可処分所得の上昇は物価上昇を上回ったものと見込まれます。
現金給与総額を業種別に見ると、医療・福祉が対前年度比プラス3.6%、建設業が対前年度比プラス5.2%と、調査産業計の対前年度比プラス3.0%を上回っているなど取組の成果が表れており、「賃金と物価の好循環」が回り始めています。
写真提供:内閣広報室