■消費者行政推進担当大臣
消費者行政推進担当大臣は、各省庁がそれぞれに持っている消費者行政を見直して、統一的・一元的な組織を新設するために、企画や立案及び行政各部の所管する事務の調節などを担当する役職でした。
現在は、消費者庁の設置を受けて役割を終えた担当職です。
福田総理は施政方針演説において、今年を「生活者や消費者が主役となる社会」へ向けたスタートの年と位置づけ、あらゆる制度を見直し、また、各省庁縦割りとなっている消費者行政を統一的・一元的に推進するため、消費者を主役とする政府の舵取り役になる強い権限を持つ新組織を発足させるという意思を表明されました。
生活者や消費者が主役となる社会を作っていくためには、主として生産者に視点を据えていたこれまでの行政から、真に消費者の視点に立ち、国民から見て分かりやすい行政へと転換させなければなりませんでした。
この分野は複数の省庁に行政がまたがっていることが多く、この辺りが消費者にとって分かりにくく、また問題が起きたときに出足が遅れる要因のひとつと言われていました。これらを改善し、真に消費者を主役とする行政組織をつくるため、各省庁縦割りになっている消費者行政を統一的・一元的に推進するための強い権限を持つ新組織の在り方を検討し、新組織新設を推進していく責を岸田文雄は大臣として負いました。
簡単に言うとこの担当は、新たな行政組織(※現消費者庁)を作るための舵取り役の大臣でした。消費者のための強い権限を持つ新しい行政組織は、どのような形が望ましいのか、どれぐらいの権限を持つべきなのか、組織の大きさや担当人員はどれぐらいが相当なのか、こういったことを検討し、取りまとめを行い、そして立案する役割です。
一番大切なのは、国民にとって分かりやすい組織であるという事です。国民から寄せられた苦情や相談の窓口や情報を一元的にまとめ、それを受け止めて、どの組織が対応するのか、分かりやすい形で国民に提示されなければならないでしょう。
今国民生活を考えたとき、安全安心という面で、色々と考えさせられる事件や事故が発生しています。その中で、食の安全・製品の安全・取引の安全など、様々な問題があります。そうした課題を前にしたとき、行政のみが頑張るだけでは不十分と言わざるを得ませんでした。日本社会は大きく複雑で、また多様化している中で、行政・事業者・消費者それぞれが努力することによって、トータルで安心・安全を確保できるのではないかという問題意識をもとに取り組みを進めました。
消費者の皆さんにも、自ら賢明な選択をするなど、賢い消費者になっていただけなければなりません。そして、その「賢い消費者」になっていただくために、この新しい消費者行政組織を活用していただけるような組織にしていかなければなりません。同時に、事業者の皆さんにも協力していただけるような、消費者行政の司令塔としての役割を、新しい組織が果たせるようにしていかなければなりません。
このように、行政・事業者・消費者、それぞれの連携が必要になってきます。
「過去を振り返っても、消費者問題の重要性は指摘されてきました。日本の行政は明治以来、産業振興官庁という体制で進んできましたが、それぞれの官庁の『出口』に消費者行政担当部署がくっついてきました。消費者問題も、食の安全・製品の安全・取引の安全など多岐にわたり、素人では対応できない状況です。消費者問題は同種被害の同時多発的発生が特徴的ですが、社会の複雑さが、この深刻さに対応するのを難しくしています。中国製冷凍ギョーザ中毒事件に見られるように、従来の縦割り行政では対応できない。新しい体制でしか対応できない時代なのです。」
「事業者と消費者は共存共栄しなければいけない時代が来ています。ともに協力しなければ、食の安全も製品の安全も、取引の安全も維持できないし、確保できない。そんなときに行政の産業振興中心という体勢はバランスがよくないのではないか。共存共栄というのなら、行政も新しい組織でバランスを取らなければならないのではないか。そんな要請もあるのではないでしょうか。」
「消費生活センターの業務は地方の自治事務として行っています。国があまり統制的なことをすると地方自治との関係で様々な議論が出てくるかもしれないが、国がある程度の支援・情報の共有・協力関係などを築いていかないと、結果として機能しないのではないか。地方分権には配慮しつつ、国がどういう連携や支援が出来るのかを考えていかなければならないと思っています。予算も組まなければならない。新しい組織のトップに誰が座るかは総理のご判断ですが、それまでの体制を作るのが私の役目。責任を果たしていきたいです。」
(『消費者情報』平成20年5月号インタビューより)